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産業廃棄物と一般廃棄物
産業廃棄物の定義は、廃棄物処理法(廃棄物の処理及び清掃に関する法律)により、「事業活動に伴って生じた廃棄物のうち、燃え殻、汚泥、廃油、廃酸、廃アルカリ、廃プラスチック類その他政令で定める廃棄物」と定められています。その他政令で定めるものも含めると20 種類の廃棄物が規定されています。また、産業廃棄物のうち、「爆発性、毒性、感染性その他の人の健康又は生活環境に係る被害を生ずるおそれがある性状を有するものとして政令で定めるもの」は、特別管理産業廃棄物に区分されており、より厳重な取扱いが求められています。
これに対して、一般廃棄物とは、「産業廃棄物以外の廃棄物」のことを指します。一般の家庭から出る燃えるゴミ、燃えないゴミ、プラスチックごみなどがこれに当たります。
一般廃棄物は市区町村が処理についての責任を持ち、産業廃棄物は排出事業者が自ら処理することが原則です。
排出事業者責任
産業廃棄物について、廃棄物処理法は、「事業者は、その事業活動に伴って生じた廃棄物を自らの責任において適正に処理しなければならない」(廃棄物処理法3 条)また、「事業者は、その産業廃棄物を自ら処理しなければならない」(同法11条)と規定し、排出事業者の処理責任を明確化しています。
産業廃棄物収集運搬業
排出事業者が自ら処理することができない場合は、委託基準に従い許可を受けた処理業者に産業廃棄物の処理を委託することとなります。排出事業者から収集運搬の委託を受けて産業廃棄物の処分場までの運搬を担う事業者を「産業廃棄物収集運搬業」と言います。
産業廃棄物収集運搬業を営むためには、都道府県知事から産業廃棄物収集運搬業の許可を受けなければなりません。
東京都で産業廃棄物を積み込み、神奈川県に持ち込む等、収集運搬に際して排出元と運搬先が都道府県をまたぐ場合は、排出元である東京都の許可だけでなく、運搬先の神奈川県の許可も必要です。
委託契約とマニフェスト
排出事業者は産業廃棄物の処理の委託に際して、収集運搬・処分それぞれの業者と、廃掃法の施行令及び施行規則で定められている項目を不備なく盛り込んだ書面をもって委託契約を結ぶ必要があります。また、処分を委託した産業廃棄物が適正に運搬処分がされたことを確認できるようマニフェストを発行することも求められています。
産業廃棄物収集運搬業の許可要件
1. 公益財団法人日本産業廃棄物処理振興センターが実施する講習会を修了していること
個人の場合は、申請者本人。法人の場合は、代表者、役員(監査役及び社外取締役を除く。)又は政令使用人がJWセンターの講習会を修了していなければなりません。
2. 申請者が廃棄物処理法第14 条5 項二号に定める欠格要件に該当していないこと
この欠格要件は多数ありますが主なものとしては次のようなものがあげられます。
- 心身の故障によりその業務を適切に行うことができない者として環境省令で定めるもの
- 破産手続開始の決定を受けて復権を得ない者
- 禁錮以上の刑に処せられ、その執行を終わり、又は執行を受けることがなくなった日から5 年を経過しない者
- 産業廃棄物収集運搬業許可の取り消し等を受けてから5 年を経過しない者
- 暴力団員又は暴力団員でなくなった日から5 年を経過しない者
- 暴力団員等がその事業活動を支配する者
3. 適切な事業計画を整えていること
排出事業者、廃棄物の種類、運搬量、性状、運搬先の処理施設が明確にされていること。
4. 収集運搬に必要な施設があること
産業廃棄物が飛散流出し、並びに悪臭が漏れるおそれのない運搬車、運搬容器その他の運搬施設を有すること。
車両に関しては、自動車検査証記録事項または賃貸借契約書等により、申請者が継続的な使用権原を有することを明らかにする必要があります。
5. 産業廃棄物収集運搬業を的確にかつ継続して行うことのできる経理的基礎を有すること
直近3年間の財務状況が決算書等により確認されます。赤字決算、債務超過の状態であるなど、財務状況によっては収支計画書や中小企業診断士の作成した財務診断書等の追加提出が必要となります。
6. 会社の定款目的に「産廃業」の記載のあること
都道府県ごとに取り扱いが異なりますが、会社の定款目的に、「産廃業」と記載してあることが申請の要件とされています。具体的には、「産業廃棄物収集運搬業」や「産業廃棄物処理業」といった記載です。
関東圏では、東京都は記載が求められていません。一方で、千葉県、茨城県、栃木県は記載が必須とされています。また、埼玉県は申請の必須要件ではないが、記載していることが望ましいとして、申請時に記載を勧められます。
収集運搬業の許可申請を行うのであれば、定款への「産廃業」の記載は、ほぼ必須であると考えられます。
産業廃棄物収集運搬業の許可申請の流れ
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01
- 講習会の受講
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申請者本人または役員等が公益財団法人日本産業廃棄物処理振興センター(JWセンター)の実施する「処理業講習会」を受講し、考査試験に合格して修了証の交付を受けます。
講習会考査は予約制となっており、JWセンターのホームぺージより申込みをします。
新規講習会の修了証の有効期限は5年です。許可の申請は修了証の有効期限内に行う必要があります。
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02
- 申請日の予約
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産業廃棄物収集運搬業の許可申請は、事前に申請日の予約が必要です。
窓口の混雑状況によっては、申請日が予約から1〜2か月以上先になることもあります。
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03
- 申請書の作成と添付書類の準備
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法人の場合の主な申請書類は次のとおりです。
【申請様式】
- 産業廃棄物収集運搬業許可申請書
- 事業計画の概要
- 運搬車両(又は船舶)の写真
- 運搬容器等の写真
- 事業の開始に要する資金の総額及びその資金の調達方法
- 誓約書
【申請者に関する書類】
- 最新の定款の写し
- 法人の登記事項証明書(履歴事項全部証明書)
- 役員等の住民票抄本
- 役員等の成年被後見人等に該当しない旨の登記事項証明書
- 政令使用人に関する証明書(当該使用人がいる場合)
- 申請者の許可証の写し(他に産業廃棄物に係る許可(他道府県市のものを含む。)を有する場合等)
【財政能力に関する書類】
- 貸借対照表(直近3年分)
- 損益計算書(直近3年分)
- 株主資本等変動計算書(直近3年分)
- 個別注記表(直近3年分)
- 法人税の納税証明書「その1納税額等証明用」(直近3年分)
【技術的能力に関する書類】
- 講習会修了証の写し
【施設に関する書類】
- 自動車検査証記録事項の写し(使用する全車両)
- 船舶を使用する場合は、船舶の使用権原を証明する書類(使用する全船舶)
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04
- 申請
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予約日に、申請書と添付書類を持って、都道府県の審査担当窓口に赴きます。
形式審査後、申請手数料を納付します。新規許可申請は、81,000円です。
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05
- 審査
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新規申請の審査の標準処理期間(許可証交付までの期間)は申請書受理後おおむね60日となっています。
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06
- 許可証の交付
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審査終了後、許可証が交付されます。
許可証は原則として申請者へ郵送されるため、あらかじめ送付先を記入したレターパックプラスを申請時に提出しておきます。