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電気工事二法とは
電気工事に関しては、電気工事の欠陥による災害を防止するために、電気工事士法と電気工事業法(電気工事業の業務の適正化に関する法律)の二つの法律によって、規制を受けています。
このうち、電気工事士法は、電気工事の作業に従事する者の資格及び義務を規定しています。一方、電気工事業法は、電気工事業を営む者の登録等及びその業務規制について規定しています。
これら電気工事二法の規制にかかるため、電気工事を施工するには「電気工事業登録」が必要です。
「電気工事業登録」と「電気工事業の建設業許可」
「電気工事業登録」は、電気工事を自社で直接施工するために必要な手続きです。
一方、「電気工事業の建設業許可」は500万円以上の電気工事を請負う場合に受けなければならない建設業法によって定められた手続きです。
したがって、建設業許可を受けず「電気工事業登録」のみでも、施工する電気工事の請負金額が500万円以下であれば問題はありません。
しかし、請負金額が500万円以上の電気工事を請負う場合は、自社で直接施工する場合だけでなく、自社で直接施工せずにすべてを下請けに任せる場合であっても、「電気工事業の建設業許可」が必要となります。
電気工事業
電気工事業とは一般用電気工作物又は自家用電気工作物を設置し、又は変更、撤去する工事の全部または一部の施工を、他の者からの依頼により反復・継続して行うことです。
ただし、下記の軽微な工事は除きます。
軽微な工事
- 電圧600 ボルト以下で使用する差込み接続器、ねじ込み接続器、ソケット、ローゼット、その他の接続器又はナイフスイッチ、カットアウトスイッチ、スナップスイッチその他の開閉器にコード又はキャブタイヤケーブルを接続する工事
- 電圧600 ボルト以下で使用する電気機器(配線器具を除く)の端子に電線(コード、キャブタイヤケーブル及びケーブルを含む)をネジ止めする工事
- 電圧600 ボルト以下で使用する電力量計若しくは電流制限器又はヒューズを取り付け、又は取り外す工事
- 電鈴、インターホーン、火災感知器、豆電球その他これらに類する施設に使用する小型変圧器(二次電圧が36 ボルト以下のものに限る。)の二次側の配線工事
- 電線を支持する柱、腕木その他これらに類する工作物を設置し、又は変更する工事
- 地中電線用の暗渠又は管を設置し、又は変更する工事
一般用電気工作物とは
一般住宅や商店等の配線および設備等の、電気事業者から電圧600V以下で受電する設備が該当します。
自家用電気工作物とは
ビル、工場等のキュービクル変電設備等、電気事業者から電圧600V以上で受電する設備が該当します。
なお、電気工事業法の手続きが必要となるのは600V以上で受電する電気工作物のうち、最大電力500kw未満の設備です。
電気工事業者の要件
主任電気工事士の設置
次のいずれかの要件に該当する者を、営業所の主任電気工事士として設置すること
- 第一種電気工事士
- 第二種電気工事士免状の交付を受けた後、電気工事業の登録を受けている工事業者において3年以上の実務経験を有する者
第二種電気工事士は自家用電気工作物に係る電気工事の作業に従事することはできません。
ただし、自家用電気工作物に係る電気工事のうちの簡易電気工事については、認定電気工事従事者認定証の交付を受けている者は、その作業に従事することができます。
また、主任電気工事士が、登録拒否事由に該当しないことも要件となっています。
- 電気工事二法等に違反して罰金以上の刑に処せられ、その執行を終わり、又は執行を受けることがなくなった日から2 年を経過しない者
- 電気工事業の登録を取り消され、その処分のあつた日から2 年を経過しない者等
器具の備付け
営業所ごとに経済産業省令で定める器具を備付けなければなりません。
営業所の種類 | 備付ける器具 |
---|---|
一般用電気工作物のみの業務 | 絶縁抵抗計、接地抵抗計、抵抗及び交流電圧を測定することができる回路計 |
自家用電気工作物の業務 | 絶縁抵抗計、接地抵抗計、抵抗及び交流電圧を測定することができる回路計、 低圧検電器、高圧検電器、継電器試験装置、絶縁耐力試験装置 |
なお、継電器試験装置、絶縁耐力試験装置については、必要な時に借入れるか、計測依頼での対応でもよいとされています。
電気工事業者の義務
- 標識の掲示
営業所及び電気工事の施工場所ごとに、氏名・名称・登録事項等を記載した標識を掲げなければなりません。 - 帳簿の備え付け
電気工事業者は営業所ごとに帳簿を備え業務に関し、経済産業省令で定める事項を記載し、5年間保存しなければならない。
電気工事業の登録手続き
登録等は、営業所の所在地を管轄する都道府県知事に行います。なお、二以上の都道府県の区域内に営業所を設置して電気工事業を営もうとするときは、経済産業大臣に行います。
施工する電気工作物の種類と建設業許可の有無により4つの電気工事業者に分類されます。
一般用電気工作物のみ または一般用電気工作物及び自家用電気工作物 | 自家用電気工作物のみ | |
---|---|---|
建設業許可なし | 登録電気工事業者 | 通知電気工事業者 |
建設業許可あり | みなし登録電気工事業者 | みなし通知電気工事業者 |
電気工事業を営むには、原則として、電気工事業登録を行い「登録電気工事業者」となる必要があります。
そして、電気工事業を営む者が建設業許可を受けた場合と、建設業許可を受けている者が電気工事業を開始した場合は、「みなし登録電気工事業者」として届出を行うこととなります。
【建設業者に関する特例】
建設業法の許可を受けた建設業者であって電気工事業を営むものについては、経済産業大臣または都道府県知事の登録を受けた登録電気工事業者とみなしてこの法律の規定を適用する。」(電気工事業法34条)
なお、建設業許可を受けている者とは、電気工事業の建設業許可を受けた者だけでなく、電気工事業以外の許可を受けて、附帯工事として電気工事を施工する者も含まれます。
ちなみに、建設業許可を受けていた「みなし登録」業者が建設業許可を失った場合は、改めて「登録」を行う必要があります。
なお、自家用電気工作物の施工のみの場合は、開始の「通知」並びに「みなし通知」の手続きを行います。
以下、電気工事業者の分類ごとにまとめます。
登録電気工事業者
- 一般用電気工作物のみ、または一般用電気工作物及び自家用電気工作物の施工をする。
- 建設業許可を受けている
以上2点に該当する場合は、開始の届出をして、届出受理通知書の交付を受けます。
申請書類
- 電気工事業開始届出書
- 主任電気工事士等の誓約書・雇用証明書
(主任電気工事士が従業員の場合のみ) - 在籍証明書
(主任電気工事士が代表者以外の役員の場合のみ) - 主任電気工事士等実務経験証明書
(主任電気工事士が第二種電気工事士の場合のみ。原本) - 主任電気工事士等の電気工事士免状の写し
- 建設業許可通知書(確認)
- 建設業許可申請書副本(確認)
届出受理通知書に有効期限はありませんが、5年ごとの建設業許可の更新時に変更届出書の提出手続を行います。
申請手数料
届出に手数料はかかりません。
通知電気工事業者
- 自家用電気工作物(最大電力500kw未満)のみ施工する。
- 建設業許可を受けていない
以上2点に該当する場合は、開始の通知をして、通知受理通知書の交付を受けます。
申請書類
- 電気工事業開始通知書
- 通知者の誓約書
- 通知者の履歴事項全部証明書(法人)
- 通知者の住民票(個人)
通知受理通知書に有効期限はありません。
申請手数料
通知に手数料はかかりません。
みなし通知電気工事業者
- 自家用電気工作物(最大電力500kw未満)のみ施工する。
- 建設業許可を受けている
以上2点に該当する場合は、開始の通知をして、通知受理通知書の交付を受けます。
申請書類
- 電気工事業開始通知書
- 建設業許可通知書(確認)
- 建設業許可申請書副本(確認)
通知受理通知書に有効期限はありませんが、5年ごとの建設業許可の更新時に変更通知の提出手続を行います。
申請手数料
通知に手数料はかかりません。